追悼 田辺聖子先生

田辺聖子先生が亡くなられた。

大好きな作家だった。
たぶん、刊行された著作はすべて読んでいると思う。
田辺先生の著作は私に、小説を読む喜び、エッセイの楽しさ、そして何より古典文学を読む楽しさを教えてくれた。

古典なんて、大嫌いだった。
ナントカ活用だの何だの、「テストに出る」古典はどうしようもなくつまらなくて堅苦しくて、一生読み返すことはないと思っていた。

それが、田辺先生の読み解く古典はもう面白くて楽しくて、ページをめくるのももどかしいほどだった。
ちゃんと「血の通った」光源氏。
私たちと同じように悩んだり苦しんだりする登場人物たち。
何より、田辺先生の目線があたたかくて優しくて、読めば読むほどほっこりとした気持ちになってくる。
そんな作家は他にいなかった。
私が数多くの古典文学に不器用ながらも親しむことができたのは、田辺先生のおかげだ。

カモカのおっちゃんとの暮らしを描いたエッセイも楽しかった。
実際にはいろいろな苦悩があったらしいが、それをみじんも感じさせることなく、日々の生活の楽しさ、豊かさとはこういうものだと教えてくれた。
田辺先生の描く関西弁がチャーミングでかわいくて、ああ、関西弁ネイティブになりたい!と願ったこともある。(無理でしたが(T_T))

小説も抜群によかった。
本当に上手い人の小説は、上手いと感じさせることもなくさらさらと読み進めてしまう。「ああ、コイツ上手いなぁ」と思わせるのは、実はまだ修行が足りない。超一流の小説は、上手いと感じさせる隙すら与えないものだ。
田辺先生の小説はまさにそれだった。

その境地には、どんなに修行しても至ることはできない。
凡人には近づくことすらできない場所というものはあるのだ。
そこに田辺先生は飄々と立っておられた。

もとより仰ぎ見ることしかできない場所にいる方だったけれど、さらに遠い場所に行かれてしまった。

合掌。

ありがとうございました。

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