飛鳥に行ってきました その3

飛鳥3日目。

屋根を叩く激しい雨音で目が覚めた。

祈りもむなしく、天気予報のとおり飛鳥は雨。
夜明けの鈍い光の中、棚田が雨に煙っている。

今日は飛鳥学冠位叙任試験の日。
参加者の皆さんには、飛鳥の数カ所に設置されたポイントを回ってクイズを解いてもらうことになっている。
お天気なら、歩いてもレンタサイクルでも気持ちいいけれど、雨だとそうはいかない。
当日参加はもちろんのこと、事前申し込みをしてくれた人たちも来てくれるかどうか……、と、皆でどんよりと盛り下がる。

盛り下がった空気のまま、朝ごはん。
雨の中、祝戸荘を出発。
飛鳥駅前で受付のテントを設営。
雨はまだやまない。

受付を担当するのは、飛鳥応援大使4名と私。
他の応援大使の人たちはそれぞれのポイントへ向かう。


雨の中、古都飛鳥保存財団事務所とテントを行ったり来たりして準備していると、応援大使のK氏に呼び止められる。
見れば、手には私の本が。

K氏は桜井市の、まさに小説の中で私が宝姫王の仕える「神宮」と設定した、檜原神社の近くにお住まいだそうだ。

「満月の夜にね、空を見上げて、ああ、この月が、宝と黒麻呂が見た月なんだと思いまして」

おお。
私が想像の中で見た月を、実際その目でご覧になった方がおられるとは。
そういう思いで月を見上げて下さった方がおられるとは。
なんかもう大感激、であった。

求められるままに、例によって下手くそすぎる字でサイン。
本にサインすることなんてめったにないけど、もうちょっとうまくならなきゃなぁ、などと反省することしきり。
(前の晩は、差し上げる方のお名前を書き間違えた。笑って許して下さったT先輩、ありがとうございました。そしてゴメンナサイ! 来年はちゃんと書きますから!)

K氏は、山の辺の道のツアーガイドもなさっておられるそう。
いつか案内していただこうっと、などと目論む梅前であった。



冠位叙任試験は9時受付開始。
それに合わせたかのように、雨脚が徐々に弱まり、うっすらと陽まで射してくる。
おおおっ、これも誰かのご人徳?(今回は誰だ)

電車が駅に着くと、事前申し込みのハガキを持ってこちらに歩いてくる方が続々と。
わああ、嬉しいっ、と、感激しながら受付業務にはげむ。


そしてさらに、今年は強力な助っ人が。

今年、飛鳥応援大使に任命された藤本さん。
自前の古代衣装を着て、電車が到着するたびに叙任試験のチラシを配ってくれる。

聞けば、本職は役者さん。
斬られ役30年のベテランなんだそうだ。

 藤本氏2
さすがに衣装がお似合いです。

藤本さんに誘われ、当日チャレンジする方たちも大勢いらした。
当日参加の方々は予備知識がないので、説明にも力が入る。

嬉しいのは、去年も来て下さった方との再会。
素敵なお二人だなぁ、と印象に残っていたカップルが、今年もまた来てくれたり。こういうのって、なんだかとても嬉しい。


午前の受付を無事終えて、保存財団事務所でお弁当をいただく。
藤本さんの映画撮影裏話など興味深く拝聴しながら、おいしくいただきました。(例によって写真はなし。食べる前に撮っときゃよかったよ、とまたまた後悔。毎日ロケ弁をブログにアップしてる大藤由佳ちゃんは偉大だぁ)


お昼が終わってうろうろしていたら、なんと!
大阪在住の大親友、美穂ちゃんが、旦那様と一緒に激励に駆けつけてくれた。
思ってもみなかったので大感激!
大阪からわざわざ来てくれたその心意気が本当に嬉しい。
持つべきものは友ですな。美穂ちゃんの登場で元気倍増。



大感激ののちは、午後の解答用紙受付に向け、盟神探湯の準備。
去年は大藤由佳ちゃんと私が古代衣装を着て(姫君と老女官)、盟神探湯をやらせてもらったけれど、今年は保存財団Y女史のお願いをぶっ飛ばし、古代衣装は着ずに、盟神探湯役は藤本さんにお願いする。

 藤本氏

さすが役者さん、たちどころに役にはまり、お湯が沸く大釜の前で神官めいた所作をしてくれる。
ところどころギャグをはさんだりして、参加者の皆さんは、去年の大藤由佳ちゃんの初々しい盟神探湯とはまた違った経験をなさったのではないでしょうか。


ところでこの盟神探湯で使った大釜、以前このブログで、古都飛鳥保存財団所有のようなことを書きましたが、念のため確認してみたところ、なんと!
飛鳥坐神社からお借りしてきた、本物だそう。
実際の盟神探湯神事で使うお釜だったんです!
ひょえ~~~。
そんな由緒正しいお釜だったとは。

叙任試験参加の皆さま。盟神探湯で使ったお釜は本当の本物です!


……ちなみに。
お釜のお湯に恐る恐る手を入れてみたところ、火傷するほどには熱くなかった。
熱めのお風呂くらい? 手を入れるくらいは可能でした。
たぶん、薪から距離があることと、お釜が大きいからだと思うのですが、これなら手を入れても火傷はしないかも。
煮えたぎるお湯の中に手を入れさせるなんて、古代の裁判はなんて残酷なんだ!と思っていたけれど、案外緩いものだったのかも。

お湯の中に手を突っ込み、中の石を取り出す古代の男。
「はい、取れました~!」
「あ、火傷しなかった? だいじょぶだった?」
「だいじょぶです。ちょっと熱かったけど。へへへ」
「それなら無罪。無罪放免。さっさとあっち行きなさい」
「へ~い。ありがとさんです」
なんてね。いい話だ。


そのうちに、続々と帰ってくる参加者の皆さん。
盟神探湯を終え、解答用紙を提出していただいたのちは、抽選会。
いろいろな博物館の特別展の入場券や、飛鳥の木を焼いて作った炭などが当たる可能性が。
メインは正倉院展の入場券。 当って大喜びして下さる方も。
皆さん楽しく抽選をして下さり、当たった方も当たらなかった方も笑顔。
なんだかこっちまでハッピーになる。


解答受付終了の4時半になり、テントを撤収。
参加者のほとんどの方が完走して下さいました。
皆さん、本当にお疲れさまでした。
来年もお待ちしております!


お仕事も無事終了したので、飛鳥駅前「飛鳥びとの館」にて、お土産を購入。

 石舞台の月

銘菓「石舞台の月」。美味しいぞ!


古都飛鳥保存財団の皆さんにご挨拶を済ませ、飛鳥駅から電車に乗る。
電車を待つホームで風人さんが、試験に参加して下さった親子連れを発見。
電車が来るまでお話させていただく。

聞けば、お嬢さんは奈良で着物の縫製の専門学校に通っておられるとのこと。ご両親は長野からいらしたそうだ。
親子で過ごす貴重な一日を叙任試験に当てて下さったんだな~、と胸が熱くなる。
またお目にかかれたら嬉しいです。ありがとうございました。



京都では娘の好物「生八つ橋の皮だけ・抹茶味」を購入し、ダッシュで新幹線に乗り込む。
車内で、親友・美穂ちゃんが差し入れてくれた柿の葉寿司を美味しくいただく。

9時すぎ、新横浜に到着。そこから1時間ほどでわが家へ。

あ~、楽しかった。

また来年が楽しみだぁ!

(2016年10月27日)

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